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人と話して聞くことで少しだけ受け入れられることもある :「ランチ酒」原田ひ香 [読んだ漫画/本/雑誌の感想]








「食」に関わる本や漫画がマイブームでよく読みます。
その中でも、ランチ×酒という異色とも思える「ランチ酒」を読みました。


■あらすじ


主人公である犬守祥子の職業は「見守り屋」。
営業時間である夜から朝まで依頼があれば、動物から人まで寝ずに見守ります。
その間、本を読んだり買い物に出かけたり人と話したり。

唯一の贅沢は見守りが終わった後の「ランチ酒」。
酒が飲めることを前提にマリアージュになりそうなお店に入って楽しみます。

「ワケアリ」な祥子も同じ訳アリの人と話したり経験を通して自分を見つめなおします。

■深夜に読んではダメ!


お酒と食事にこだわりがある人に読んで欲しい本です。
主人公のように真剣にお酒に合う食事を考えてしまう人だと共感できます。

ただお腹を満たしたいお酒が飲みたい、飲み会という場が楽しいというだけの人ではちょっと物足りないでしょう。

食事は例え嫌なことがあっても忘れたり気分を払拭させてくれるものがあるからです。

祥子が嫌な客と遭遇してしまった後の食事で
「私は生きているし、健康だ。元気出そう。へこたれてなんかいられない」
という独白があるほどです。

そう思わせてくれるランチを探す勇気をもらえます。
だから朝の通勤で読んで欲しいです。

連作短編集で1話20ページ前後だから読み進めやすいです。

ただ、食事の描写が的確すぎるから深夜には読まないでください><





■美味しいものを食べてるときの真面目な人の脳内


この小説はタイトルの通り、食事がメインです。
全編を通じて職業である「見守り屋」での人間模様、主人公である祥子の人間関係や過去はおみおつけ状態です。

祥子の心情そのものです。

祥子に限らず人生や人間関係は複雑怪奇で何をどうしたからと言って正解ではありません。
「たられば精神」もありえないリセットが効かないものです。

だからこそ何かに逃げたくなり脇に置きたくなる。
祥子にとってはそれが「ランチ酒」であり特に「酒」です。

何もかもを忘れたいがために仕事終わりを理由に酒を飲む祥子。

飲む、美味しい食事を楽しむ事で一瞬でも嫌なことを忘れたい。
けれど酔いつぶれる程、理性を潰せない。

そんなただただ嫌なことを忘れるがために飲んで食べるわけではないところに祥子の真面目さを感じました。

人生や人と向き合いきれない心の弱さ。
隠すために「ランチ酒」という隠れ蓑を作り一瞬の快楽を得る。

それに強く惹かれ共感しました。

人にはそれぞれ弱さがあり隠して忘れさせてくれるモノを探している。

人生においてどんな判断をしてもそうなることを気づかせてくれます。

■人間には隠れ蓑も隠れさせてくれる人も必要


祥子はただラクに「見守り屋」をしランチ酒を過ごすだけの人間では終わりません。

様々な内情を抱えた人間をやり過ごすだけではなく感想や考えを持ち前進していきます。

ある人は大切な人を亡くし憔悴。
ある人はあまりあるお金を使ってアイドルを追っかけ他人を否定。
ある人は花を育てる事に喜びを見出す。
ある人は肉親の介護を「普通」と言い切る。

それぞれの人は祥子の言葉を聞くだけです。
祥子もまた依頼人の話を聞くだけです。

でも祥子は「見守り屋」です。

あえて頼むほどですから依頼人は対象を想っているのです。
だから「見守って欲しい」と有料でありながら頼むのです。

祥子はそれがわかったから友人が自分を見守ってくれていることに気づきます。

そこから段々自分は何がしたいのか、何を見守りたいのかを考えて行動していきます。

人間は気づき、人生の目標みたいなものを持てば足取りが軽くなるのだな、と思います。

決して強くなれるとは思いません。
強くなる必要もありません。

自分を強いと思えばなかなか弱さを認められない気がするからです。

弱さを認めだけで強いのだから前に進まなくていい、顔をあげられればいい、そして足取りが軽ければいい。
そのためのランチ酒は必要です。









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